無口な彼が残業する理由 新装版
「だって」
丸山くんはそこで一旦口を結んで、
私を胸から解放した。
しかし、腕はまだ私をしっかり捕らえている。
「俺がサイト作っていることなんかより大事なこと、伝えたかったから」
その顔は至極真剣だ。
「俺がここまでやらなきゃ、神坂さんには伝わらない」
あの日、結局丸山くんは口に出してはくれなかった。
今度こそ、聞かせてくれる?
「何を?」
一度だけでいい。
「それは」
一度でも聞くことが出来れば、
それを信じることができる気がするから。
「俺が」
強くなれる気がするから。
「うん」
「神坂さんを好きだってこと」