無口な彼が残業する理由 新装版
「ごめんね、泣いてばっかりで。ただでさえ丸山くんにはカッコ悪いところばっかり見られてるのに」
涙を拭うと、手の甲に崩れたメイクがべったり付いてしまった。
プレゼンのために濃いメイクをしていたから、
きっと今、とんでもない顔になっていることだろう。
「別に」
丸山くんはそう言うけれど、
私としては当然シャキッとしている自分を見てほしいって思っているのに。
「あ、そう言えば。丸山くん、いつの間にサイトのデータ提出してたの?」
「ああ、それなら」
丸山くんは再び長机に腰をかけた。
「飲み会の、次の日」
愛華ちゃんの歓迎会の、次の日ってこと?
「土曜日じゃない」
「うん。休日出勤した。驚いた。あの日は一緒に会社を出たはずなのに、その時には出してなかったし」