無口な彼が残業する理由 新装版

丸山くんは困ったように笑った。

でも、何も言い訳なんてしてこなかった。

その代わり。

「妬いてくれたの?」

座ったまま再び私を包み込んでくれたから、

あの時の苦しい気持ちも浄化されていった。

「当たり前じゃない」

私も丸山くんの首に腕を回す。

座っている丸山くんが私の胸に顔を埋める形になった。

「この体勢、ヤバくない?」

それに気付いた私は

「ごめんっ……」

と言って離れようとしたけれど、丸山くんの腕がしっかり巻き付いて離れない。

「俺は嫌いじゃない」

服の上からキスをしていく。

「ちょっ……」

ここ、会議室なのに。



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