無口な彼が残業する理由 新装版
キスはだんだん上がってきて、
胸元から鎖骨へ、鎖骨から首へと移動していく。
「丸山くんっ」
「なに?」
「待って、ストップ、一旦止め」
「無理」
有無を言わせない、ちょっと強引な行動。
首から耳へやってきた時には、私はもうまともに立っていられなかった。
丸山くんに寄りかかり、しがみつき、
まるで差し出すように身を委ねて。
「こっち、向いて」
なんて言われてしまえば、逸らしていた顔を素直に向けてしまう。
唇が重なれば、もう周りなんて見えなくなる。
あんなにも強く、諦めようと決めていたのに。
頭ではわかっていたのに。
私の心と体はこうされることを期待していたみたいだ。