無口な彼が残業する理由 新装版
膨れっ面の私を見て、また丸山くんが笑った。
「別に、どんな顔してたって、神坂さんは神坂さんだろ」
丸山くんは立ち上がって、
ボロボロメイクの私の額にキスをした。
「そうだけど、せっかくだったら可愛い方の顔を見せたいと思うじゃない」
これからは、ちゃんと真面目にメイク直しをしてみよう。
「俺は……」
丸山くんはスタスタ歩いていって、
会議室の出入り口の前で立ち止まった。
そして、
「あんたがどんな顔でも可愛いと思ってる」
とんでもなく甘い言葉を置いて、
この部屋から出て行った。