無口な彼が残業する理由 新装版

「お預けって……」

私の抗議に力がなくなっていく。

吐息が混じらないようには話せない。

「早く、俺のものにしたい」

「そんなの……、もう……」

私はとっくに丸山くんのものなのに。

焦らなくたって良いのに。

「知らないだろ」

「なにを?」

「俺がどれだけあんたのこと思ってるか」

丸山くんだって、私がどれだけあなたを思っているか知らないでしょう?

「おたがいさ……んっ」

整った顔は凶器に匹敵すると思う。

突きつけられると、何も言葉を発せない。

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