無口な彼が残業する理由 新装版
丸山くんは始めこそ抵抗する私を楽しむ素振りを見せていたけれど、
衣類が全てベッドの下に落ちてからというもの
すっかり顔つきが変わってしまった。
余裕のない切羽詰まった表情は妖艶で
私には刺激が強すぎる。
「そんなに……」
だけど私は丸山くん以上に余裕なんて持てなくて。
「ん?」
「そんなに、色っぽい顔しないで」
いつかの言葉を借りると、
丸山くんが額に滲む汗を拭う。
「どんな、顔?」
お互い息が切れるほど、
年甲斐も無く。
「そんな顔」
あれ以来言葉にしてくれない気持ちは
私にしっかり伝わってきた。