無口な彼が残業する理由 新装版
「はあぁぁ」
ため息をつくと、丸山くんが眉間にしわを寄せた。
「どうしたの」
人の顔を見てため息なんてつくなと
表情が言っている。
「ちょっと憂鬱」
「なにが?」
「だってさ、同じ職場に彼氏がいるんだよ? 私、ちゃんと仕事できるかな?」
丸山くんのことでモヤモヤするだけでミスを連発してしまった。
私のことだから、しばらくは浮かれてしまうだろう。
頭の中がお花畑のおめでたい状態で、
まともに働けるだろうか。
大事な案件だって抱えているのに。
「なんだ」
真剣に悩む私を尻目に、丸山くんは私とは違うため息をついた。