無口な彼が残業する理由 新装版

「はあぁぁ」

ため息をつくと、丸山くんが眉間にしわを寄せた。

「どうしたの」

人の顔を見てため息なんてつくなと

表情が言っている。

「ちょっと憂鬱」

「なにが?」

「だってさ、同じ職場に彼氏がいるんだよ? 私、ちゃんと仕事できるかな?」

丸山くんのことでモヤモヤするだけでミスを連発してしまった。

私のことだから、しばらくは浮かれてしまうだろう。

頭の中がお花畑のおめでたい状態で、

まともに働けるだろうか。

大事な案件だって抱えているのに。

「なんだ」

真剣に悩む私を尻目に、丸山くんは私とは違うため息をついた。

< 229 / 382 >

この作品をシェア

pagetop