無口な彼が残業する理由 新装版
そんなことないなんて言ってしまったけれど、
実のところは自信がない。
これまでに仕事と恋愛を両立できたことがないからだ。
入社してから2人と付き合ったけれど、
どちらも私が仕事を優先するばかりにうまくいかなかった。
「俺と仕事、どっちが大事なの?」
なんて女みたいなことを言われたこともある。
丸山くんにもいつか同じことを言わせてしまうのだろうか。
同じオフィスで働いているから毎日顔を合わせはするけれど、
私はそもそも付き合っている者同士がどんな風に時間を共有するのか
わからなくなってしまっている。
「神坂さんはどうせ仕事に没頭するだろうから、ね」
丸山くんが体をこちらに向けて私を包み込む。
「その仕事の時間を、俺がもらうことに決めてるから」