無口な彼が残業する理由 新装版
「丸山も、朝から機嫌がいいしさ」
青木の視線を追うと、いつもとかわらず無表情の丸山くん。
「いつもと同じじゃない?」
私には変わったようには見えないけれど。
「そんなことねーよ。あいつ、朝から俺に余裕の表情見せてきて、鼻で笑いやがったからな」
「何それ。あんた丸山くんに嫌われてんじゃないの?」
「ふん、俺だって嫌いだバカ野郎」
まるで小学生だ。
ライバルだなんだかんだと言っても、
本当は仲良くしてるくせに。
「神坂、俺と浮気しない?」
「は?」
「いいから寂しい俺を慰めろ」
相変わらず呆れるくらいふざけてばかりの青木。
それでもあからさまに落ち込まれるよりは大いにましだった。