無口な彼が残業する理由 新装版

「あんたね、よく見ると顔だって悪くないんだから。シャキッとしてれば彼女の一人や二人、すぐにできるでしょ?」

「よく見るとって、よく見ないとダメなのかよ」

「うん。私、あんたがまあまあイケメンだって最近気付いたから」

「マジ? 俺イケメン?」

急にシャキッと顔を作る青木が面白い。

「丸山くんには負けるけどね」

付け加えると、せっかくカッコ付けた顔が一気に崩れた。

「くそー。性格は絶対俺の方が良いんだからな」

性格なんてどっちが良いとか悪いとか比べようがないのに。

だけど、青木が良い奴であることは、

私もよく知っている。

振られたのに私と仲良くしてくれているのは青木なりの優しさだってことも、

本当はわかっている。

< 239 / 382 >

この作品をシェア

pagetop