無口な彼が残業する理由 新装版

5月も中旬になると、昼間の陽射しが強い。

木々に葉が繁り、都会の街路樹からも生命力を感じた。

駅のホームで電車を待っていると、

ポケットに入れていた携帯が震えた。

メールだ。

送信元はアドレス帳登録されていないメールアドレスからだった。



from: maruyama.d@skplanning.co.jp

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頑張って。



たった一言だけ。

それでも嬉しかった。

一言だけというのが、彼らしくて。

私も一言だけ、

「ありがとう」

顔文字付きでそう返信した。

「丸山か?」

ニヤける課長。

焦る私。

「えっ? 何でわかったんですか?」

職務中に彼氏とメールなんてしたことがなかったから、

いけないことをしたような気分になる。


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