無口な彼が残業する理由 新装版
「お前たち、付き合ってるんじゃないのか?」
「な、なぜ課長までそれを……!」
私が尋ねると、課長は呆れたような顔をした。
「やっぱり顔に出てるんですかね」
再び顔をペチペチ。
仕事に支障を来したくないから、
出来るだけ隠すつもりでいるのに。
「おいおい神坂、忘れたとは言わせないぞ」
「何を?」
「お前たちのキューピッドはこの俺なんだからな」
課長がキューピッド?
顔ではっきりハテナを表す。
「昨日、会議室。二人にしてやったろ」
「ああ!」
そういうことか。
昨日は色々ありすぎて、
すっかり忘れてた。
本来なら忘れるべきでないご恩を、
たったの一日で忘れてしまっていた。