無口な彼が残業する理由 新装版

「よかったな、神坂」

「まぁ、良かったですけど」

「お前は女のくせに仕事ばっかりだったから。嫁の貰い手があるのか心配だった」

嫁の貰い手って……たしかに自分でも結婚できるか不安に思っていたけれど。

「余計なお世話ですよ。っていうかそもそも結婚なんてまだ考えていませんし」

このまま上手く行けばそういう話になるのかもしれない。

でも、仕事人間の私はそれが簡単でないことを知っている。

「丸山は不器用だけど一途な男だよ」

課長が笑いながら言った。

「どうして課長にわかるんですか」

「はは、どうしてだろうな」


< 243 / 382 >

この作品をシェア

pagetop