無口な彼が残業する理由 新装版
「よかったな、神坂」
「まぁ、良かったですけど」
「お前は女のくせに仕事ばっかりだったから。嫁の貰い手があるのか心配だった」
嫁の貰い手って……たしかに自分でも結婚できるか不安に思っていたけれど。
「余計なお世話ですよ。っていうかそもそも結婚なんてまだ考えていませんし」
このまま上手く行けばそういう話になるのかもしれない。
でも、仕事人間の私はそれが簡単でないことを知っている。
「丸山は不器用だけど一途な男だよ」
課長が笑いながら言った。
「どうして課長にわかるんですか」
「はは、どうしてだろうな」