無口な彼が残業する理由 新装版

「今日はこれで帰れるんだろ?」

「うん、一応ね」

「飲み行かねぇ?」

青木がいつものノリでそう言った時、

ぐったりとデスクに突っ伏す私の肩に

温かい何かが触れた。

その瞬間、青木の顔が不機嫌に歪む。

「あーはいはい。すんませんでしたー」

青木がぷいっと顔を背ける。

温かい何かの正体は、丸山くんの手だった。

威嚇するような冷ややかな視線を青木に向けている。

相変わらず言葉にはしないけれど、

それはまるで、

「俺の女だ」

と主張しているようだった。

< 246 / 382 >

この作品をシェア

pagetop