無口な彼が残業する理由 新装版
「今日はこれで帰れるんだろ?」
「うん、一応ね」
「飲み行かねぇ?」
青木がいつものノリでそう言った時、
ぐったりとデスクに突っ伏す私の肩に
温かい何かが触れた。
その瞬間、青木の顔が不機嫌に歪む。
「あーはいはい。すんませんでしたー」
青木がぷいっと顔を背ける。
温かい何かの正体は、丸山くんの手だった。
威嚇するような冷ややかな視線を青木に向けている。
相変わらず言葉にはしないけれど、
それはまるで、
「俺の女だ」
と主張しているようだった。