無口な彼が残業する理由 新装版



始業して、この日回る企業の場所を確認していた時のこと。

「大地せんぱ〜い」

耳に届く甲高くて甘い声。

声がした方に顔を向けると、

丸山くんが愛華ちゃんのパソコンの方に顔を向けていた。

「ここなんですけど〜」

丸山くんの顔が、もっと愛華ちゃんに近づいていく。

パソコンのモニターに隠れ、

取り方によってはキスしているようにも見える。

まただ……。

胸に溜まるモヤモヤ。

仕事に支障を来すからあまり気にしないように意識しているけれど。

付き合い始めたからと言って、

私の疑念が全て晴れたわけではない。

< 252 / 382 >

この作品をシェア

pagetop