無口な彼が残業する理由 新装版
浮かれてしまう気持ちと嫉妬してしまう気持ちが表裏一体になって、
風向きが変わるたびにくるくる回るような心情を持て余していたある日、
課長がこんなことを言い出した。
「出張だ」
何となく覚悟はしていた。
スポンサー候補は東京にあるとは限らない。
関西にある会社とのアポが取れたらしい。
「そこで、残念なお知らせなんだがな」
「残念なお知らせ、ですか?」
「ああ。俺が同行できない」
「ええっ!?」
それは、つまり。
「私一人で行くってことですか?」