無口な彼が残業する理由 新装版
「何が?」
「恋愛の仕方っていうか、気持ちの処理の仕方が」
いかんせん数年ぶりの恋愛だ。
真剣な顔をしていた菊池さんは柔らかく笑って、
さっきは優しく叩いた私の肩を
バシバシ強烈に突いてきた。
「なーんだ」
痛いです、菊池さん。
「似た者同士じゃん、あんたたち」
「え?」
菊池さんは笑いながら、手を振って去っていった。
似た者同士って、どういうことだろう。
不思議な姉御、菊池さん。
彼女が少なからず私たちの関係に影響を与えていることは間違いない。
もしかしらら丸山くんも、彼女の言葉に心を揺さぶられたり
勇気づけられたりしているのだろうか。