無口な彼が残業する理由 新装版
帰る気力がないとか言ってたくせに、
私は半ば小走りで駅に向かい、
ちょうどやってきた電車に飛び乗った。
帰宅して、大急ぎでシャワーを浴びて、
でも体だけは丁寧に洗い込んで。
肌の手入れもそこそこに、洗いたての可愛い部屋着を身にまとう。
そうこうしている間にチャイムが鳴ると、
飛びつく勢いで玄関に向かう。
扉を開けると、そこには仕事着よりも少しラフな服装の丸山くん。
「いらっしゃい。早かったね」
きっと声も明るい。
「まあね」
丸山くんはさも当然かのようにスルッと部屋に入り込んで、
靴を脱ぐ前に私を腕で包み込んだ。
それだけでもう、私の疲れは吹っ飛んでしまう。