無口な彼が残業する理由 新装版
隣の席に座った丸山くんがスッと腕を伸ばしてきて、
大きな手が私が持っている缶を奪っていった。
カコッと小気味良い音がして、缶が開く。
そして大きな手は開いた缶を携えて私のもとに戻ってきた。
「ありがと」
「うん」
なに、これ。
ドキドキが止まらない。
大好きなホットのミルクティーなのに、
味が全然わからないくらい。
「あのさ」
声をかけられると心拍数がまた上がる。
「頑張りすぎ」
優しい声で言われると、目頭が熱くなってしまった。
「そう?」
何とか応えると、丸山くんはコーヒーをデスクに置いて立ち上がった。