無口な彼が残業する理由 新装版
8時ギリギリになって、まだ目が半分ほどしか開いていない青木がやって来た。
「おはよー……って、お前も一緒かよ」
青木は丸山くんを見るなり眉間にシワを寄せて、肘でつついた。
「悪い?」
「別にぃ~。過保護だなと思っただけだよーだ」
小学生のような青木の態度に吹き出すと、
今度は丸山くんが不機嫌な顔になる。
それがまた子供じみてて微笑ましかった。
「時間だ。俺、行かなきゃ」
「うん。わざわざ見送りありがとね」
ほとんど毎日顔を合わせているけれど、
しばしのお別れだ。
「気をつけて」
「うん」
「……青木に」
そっち?
「はぁ? 俺かよ」
こうして過剰な反応をし合う二人。
好きな人に見送られて別の男と旅をするなんて、
やっぱりなんだか変な感じがする。