無口な彼が残業する理由 新装版
青木は呆れた顔でため息をついた。
「どんなやつかもわかんないで付き合ってんのかよ。俺はそんなお前が一番わかんねー」
「仕方ないじゃない。好きになっちゃったんだから」
私が好きで、丸山くんもこんな私のことをたまたま好きになってくれて。
ワケがわかんないうちに付き合った感じだし。
「お前な。忘れてるようだから言っとくけど、俺だってお前のこと好きなんだからな」
……忘れてなんかない。
だけど普段通りにしかできないだけ。
「ごめん、自分のことで精一杯すぎて忘れてた」
そう言うと青木はフンと鼻を鳴らして
「寝る! 着いたら起こせ」
と不貞腐れてしまった。
ごめんね、青木。
青木だってこんな出張、
多少は気まずく思うよね。
だからきっと、青木もいつものように憎まれ口を叩くんだ。