無口な彼が残業する理由 新装版
そして素早く私の背後に移動した。
何だろうと思っていると、
肩に温もりを感じた。
「えっ?」
丸山くんは無言のまま私の肩を圧迫し始める。
ほどよい指圧は肩を中心に全身へと血を巡らす。
肩もみ、してくれているらしい。
「やっぱり」
「やっぱり、何?」
「左が凝ってる」
「左? あっ……」
左のある一ヶ所を重点的に指圧する。
自分でもわかるくらい固くなっている。
ちょっと痛いけど気持ちのいい力加減に、
気の抜けたような声が出てしまう。
「あっ、そこ。超気持ちいい」
ドキドキなのかマッサージの効果なのか、体がポカポカしてきた。
「……んっ、あ、そこ……」
丸山くんの手は肩の外側から内側へと滑らかに移動していき、
首へと辿り着く。