無口な彼が残業する理由 新装版
驚いて右肩を確認すると、
段ボール越しに見覚えのある顔が見えた。
「丸山くん?」
同期入社の丸山大地(まるやま だいち)。
無口で無表情で無愛想。
たまに口を開けば三文字程度で口を結んでしまう、
見てくれだけで言えばそこそこのグッドルッキングガイである。
丸山くんは相変わらずの無表情で何も言わずに段ボールを抱え、
まるで重量を感じていないような足取りで階段を上って行く。
私は呆気に取られたまま、その姿に見とれてしまった。
無愛想な彼のさりげない優しさが、
鳥肌を立ててしまうほどカッコ良かったからだ。