無口な彼が残業する理由 新装版
恐らく、右手の親指。
首と頭部の境目の辺りのある一ヶ所を刺激されたとき、
「ああっ……!」
あまりの感覚に、私は体を震わせ一層大きな声を出してしまった。
その瞬間、丸山くんの力が緩んだ。
「なぁ」
「ん?」
血行の良くなった上半身の感覚に酔いながら彼を見上げると、
丸山くんは困ったような顔をしていた。
「あんまりさ……」
そこまで言って口を結んでしまった。
「え? なに?」
私、何か迷惑かけたかな?
「いや、いい」