無口な彼が残業する理由 新装版
そんな顔されると、不安になる。
恋愛から離れていた私だって、
せっかくの好きな人と二人きりのシチュエーションで嫌われたりしたくない。
「ねぇ、何? 言ってよ」
何を思っているの?
丸山くんは言葉にしたがらないから、
表情を読み取って真意を探るしかない。
私がじっと顔を見つめていると、
丸山くんは自分の顔を隠すように私が座っている椅子を回した。
再び背後に丸山くんを感じる。
「いや、だから」
だからと言われても。
再び椅子を回して顔を窺おうにも、
丸山くんはそれを許すまいと椅子を手で固定している。
そしてふわりと頭上から声が降りかかってきた。
「あんまり色っぽい声、出さないで」