無口な彼が残業する理由 新装版

青木は自分の部屋の鍵だけを持って私の部屋にやって来た。

そしてさも自分の部屋かのようにどかりとちゃぶ台の前に座って、

私にも座るように促した。

どんな顔をしていいかわからない。

「で? なんであいつらが京都にいるんだよ」

「私に聞かないでよ」

「沼田さんはよくわかんねーけど、丸山が来るくらいだから神坂に連絡くらいしてたんじゃないの?」

どうだかね。

「携帯、切ってたからわかんない」

「はぁ? 切ってた?」

「私、疲れてて。昨日の夜電話したとき、しょうもないことで腹が立っちゃって。それで、電源落としてた」

そして電源はまだ入れていない。


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