無口な彼が残業する理由 新装版
お菓子を食べる手を止めて、お茶をすすって。
一息ついた。
「神坂」
小さく呼ばれた名前。
それと同時に青木が私に一歩にじり寄った。
奇麗な真顔が少し近づく。
「お前の言葉、信じるぞ?」
青木のこと、好きになる。
「いいのか?」
今更確認なんてしないでよ。
詰められれば詰められるほど、
決意が鈍るじゃない。
「いいよ」
丸山くんの浮気現場、遭遇しちゃったんだもん。
私にはもう、丸山くんを真っ直ぐ見つめることなんてできない。