無口な彼が残業する理由 新装版

青木は温くなったお茶をすすって、

一息ついた。

「悔しいから何も言わなかったけど、この際だから言うわ」

私もすっかり冷たくなったお茶を少しだけ口に入れた。

「何よ」

「お前、誤解してんだよ」

「誤解?」

誤解って、何の?

「丸山と沼田さんのこと」

誤解も何も、二人で仲良く清水の舞台に立っていたじゃないの。

「誤解って、なんであんたにそんなことがわかるのよ。第一、私まだ何も話してないじゃない」

「状況を考えたらお前の思ってることくらいわかるっつーの」

「だからって……」

「あーもう、だから。とりあえず風呂行くぞ。体温めて、頭冷やせ。もっとちゃんと考えろ」



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