無口な彼が残業する理由 新装版
青木は私の隣に座って石庭に目を馳せる。
「なぁ、神坂」
「なに?」
青木はしばらく黙って、
風が止んでから発した。
「丸山とちゃんと話せよ」
返事ができなかった。
話なんてしたくないからだ。
丸山くんは無口だし、言葉にするのが得意ではない。
それに、もし上手く丸め込まれてしまったら、
私の決意が鈍ってしまう。
黙っている私にしびれを切らしたのか、
青木がまた口を開く。
「誤解してるって言ったろ?」
言ったけど、言われたけれど。
「誤解だとして、それが何だっていうのよ」