無口な彼が残業する理由 新装版
私なりに考えて、考えて、考えて。
愛華ちゃんとのことが誤解である可能性も考慮した。
「結局さ、私が丸山くんのこと信じられなくて、不安に思ってるから嫌になったんだもん」
あの二人が一緒にわざわざ京都へやって来た理由が正当なものだったとしても、
私はきっと丸山くんを信じることも許すこともできない気がする。
丸山くんにとって私が一番だったとしても、二番候補に誰かがいることに堪えられるほど
私は出来た女じゃない。
「嫌になった、か」
「嫌になったよ。仕事仕事ってイキがってても、やっぱ女なんだもん」
「女?」
「うん。女はやっぱり唯一無二で愛されたいし、愛されることで安心したい生き物なんだなって思った」
やだな、青木相手に愛なんか語っちゃって。
珍しく真剣に聞いてくれるから、ついつい口から出してしまう。
「丸山には、愛されてなかった?」