無口な彼が残業する理由 新装版
丸山くんは、大きなため息をついた。
そして無表情の中のニュアンスではなく、
ちゃんと眉と目を釣り上て怒った顔をした。
「浮気してんのは、どっちだよ」
青木とそこそこディープなキスをしてしまった私は、
後ろめたさで目が泳いだ。
「いつもいつも、青木の側にいて。俺の前ではほとんど笑わないのに、青木の前ではゲラゲラ笑って」
え? ちょっと待ってよ。
「俺とはどこにも出掛けたことないのに、青木とはよく飲みにいくし、出張のついでとか言って旅行なんかするし」
丸山くんが言ってることって、
もしかして。
「青木の方が大事なんだろ? 青木の方が好きなんだろ?」
私が思っているのと同じこと?