無口な彼が残業する理由 新装版
「愛華ちゃん!」
愛華ちゃんはズカズカこっちに歩いてきて、
丸山くんを睨みつけながら言った。
「ちゃんと言ってあげなきゃダメだって言ったでしょう?」
丸山くんは私から腕を離そうとはしない。
この子は一体、何をそんなに怒っているの?
何も言えない丸山くん。
「もういいです! 私が言います」
丸山くんは圧倒されて意気消沈した様子だ。
「理沙先輩」
「は、はい」
「大地先輩、後輩の私が見ててイライラするくらい、理沙先輩のことが好きなんです」
「……え?」
怖い、確かに怖い。
だけど、愛華ちゃんの怒りの元は、
私が思っているのとは全く違うみたいだ。