無口な彼が残業する理由 新装版
「ねえ、丸山くん」
私は体を預けながら甘えた声で語りかける。
「私、この企画が失敗したら、会社辞めようかと思ってるの」
これは咄嗟に思いついたことではない。
プレゼンが決まった日から考えていたことだった。
「……え?」
「死力を尽くしてダメだったら、もう潔く諦めようかと思って」
ここまで話が大きくなってしまっては、
失敗したとなると会社には居づらくなってしまう。
今年で28歳になる。
私はキャリア志向だけど、普通に結婚して子育てだってしたいと思っているし、
また最初から夢を追いかけるとなると、
次のチャンスが何歳で訪れるかわからない。