無口な彼が残業する理由 新装版
「では、次の方。当社に入社したらどんな仕事がやりたいですか?」
「僕は、先程の方のように明確で大きな目標を立てるのが苦手です。しかし、細かい目標を立て、実行していくのは得意です。だから、例えば彼女の企画が成功するようにサポートしたい」
集団面接の時、私が堂々と語った夢に被せてこんなことを答えていた男子学生がいた。
自信なさげな言葉の割にはハキハキと言葉を紡ぐ人だった。
私は面接官の方ばかり見ていたから彼がどんな人かわからなかったけれど、
あんな人と仕事ができたらいいなって思った。
私をサポートして欲しいと思った。
それと同時に、あんな他力本願な回答じゃ内定なんて取れないでしょうとも思った。
きっと彼は落ちたんだろうな。
今ごろどこの会社でどんな人の目標をサポートしているんだろう。
もう随分前のことだけど、
今でもたまに思い出す。