無口な彼が残業する理由 新装版
「まだ、甘いな」
私の企画書は、チャラメガネがチャームポイントの山中課長にあっさりと突き返されてしまった。
「協力してくれる企業の見込みは? ネットのサイトは全国各地、いや、世界中で閲覧できるんだから、その辺のショップじゃ話にならないぞ」
何も言い返せなかった。
課長の言う通りだ。
私の企画は
「全身コーディネートを1万円以内で」
をテーマに、女子高生のお財布事情を意識したファッションを提案するという企画だ。
課長の指摘はどれもこれも痛いもので、
私にはまだまだ力がないのだと言われているようだった。
「発想は良いと思う」
そう言ってもらえたけれど、素直には喜べない。