無口な彼が残業する理由 新装版
「はぁ……」
ため息をつくと、膝の上で握りしめている出来損ないの企画書に落ちていった。
「辛気臭いなぁ。ボツになるのはいつものことだろ」
そんな私を笑う青木。
「ボツじゃないもん。直してまた出すし」
「懲りないねぇ」
笑ってもらえるだけマシだ。
これで誰にも相手にされなかったら惨めで仕方がない。
忘れないうちに指摘された箇所を赤で書き記して、
デスクにしまう。
前回提出した時はボロカスにダメ出しされたから、
悔しくてダメ出し以上に改良して提出した。
ちょっと自信があっただけに、挫けそうだ。
「神坂ー。頼んどいたシャンプーの記事、出来てる?」
先輩社員の声で無理矢理顔を上げる。
感傷に浸る暇もない。
「はーい。今出しまーす」
それでも通常業務はこなさなければ仕事にならない。
好きなことばかりができるわけではない。