無口な彼が残業する理由 新装版
やらなければならない仕事をバタバタ片付けているうちに時間がどんどん過ぎて、気付けば定時は過ぎてしまっていた。
6時を過ぎた辺りでチラホラ人が帰り出す。
私はさっきの企画書を取り出して、今日も会社に残ることを決めた。
「お疲れー」
薄っぺらなカバンを肩に担いだ青木が私の方を叩く。
「お疲れ」
ぶっきらぼうに返すと再び笑われる。
「拗ねすぎ。たまには早く帰れば?」
私は口を尖らせたまま首を横に振った。
「忘れないうちに直せるとこは直しておきたいの」
「そっか。頑張れよ」
「うん……ありがと」
癪だけど、青木に励まされて少しやる気を取り戻した。
そうだよね。
拗ねてる時間がもったいない。