無口な彼が残業する理由 新装版
資料を開いて、色々なファッション雑誌を広げて、
少しずつ企画書を直してゆく。
直すごとに企画書はボリュームを増してゆく。
加筆修正が必要なのは、主に私がザックリと抽象的に書いてしまった部分だ。
課長に指摘されるまでそれが抽象的であることさえ気付かなかったのは、
本当に情けないことだと反省する。
丁寧にやっていくと一つの項目を直すだけで何十分という時間がかかってしまう。
そうしているうちに時間が水のように流れていって、
やっぱり気付けば時刻は9時になってしまっていた。
「あー……もうこんな時間」
私の声が虚しく事務所に響く。
人の気配がしない。
ふとウェブデザインの島を眺めると、
丸山くんの姿も見当たらない。
ここ最近しょっちゅう一緒に頑張っていたけれど、
今日は私一人のようだ。