無口な彼が残業する理由 新装版

背後からかけられた声に驚いて振り向いた。

インターネット事業部の入り口に缶を二つ持っている丸山くんが立っている。

さっきまでいなかったのにどうして……?

私は慌てて涙を拭った。

誤魔化せていないことはわかっている。

だけど目元ぐちゃぐちゃの顔を見られるよりはましだと思った。

恥ずかしいとこ見られちゃった。

好きな人の前では笑っていたかったのに。

「ごめん、情けないとこ見せちゃったね」

何とか笑顔を見せておく。

だけど丸山くんは無言で無表情のまま。

怒っているようにも見えて、少し怖い。

「神坂さん」

ゆっくりとこちらに近付いてくる。

手にはコーヒーとホットミルクティー。

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