無口な彼が残業する理由 新装版
結局丸山くんは私のデスクまで箱を運んでくれた。
音を立てないようにそっと床に下ろすと
礼も聞かずに去ってゆく。
「あのっ、丸山くん」
私はどうしてもお礼が言いたくて呼び止めた。
「なに?」
丸山くんは無表情でこちらに顔を向ける。
「運んでくれて、ありがとう」
私が微笑んでみせても顔をピクリとも動かさないまま。
「うん」
丸山くんは同じ部屋にある彼のデスクへと戻っていった。