無口な彼が残業する理由 新装版

「ひどーい。こんな時は嘘でも、そんなことないよ。可愛いよ。って言ってよね」

メイクを直しながらツッコミを入れるとハハッと笑う声が聞こえた。

素早く丸山くんの方を見たけれど、

彼はすでに背を向けていて笑顔を見ることはできなかった。

残念。

私は諦めて再び鏡に向かう。

泣いた後の目元はパリパリしてメイクが直しにくい。

だけど少しでも可愛く見えるよう、頑張って直さないと。

「神坂さん」

「なに?」

期待した言葉をくれるのだろうか。

私は手直しが済んだ目を丸山くんに向ける。


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