無口な彼が残業する理由 新装版

「迷惑なら、やめとく」

そう言って傘を差し出す丸山くん。

駅を出たらこれを使って帰れってこと?

そんなことしたら丸山くんが濡れてしまう。

「迷惑なわけないよ」

そうじゃなくて、逆に私が迷惑かけてない?

そう訪ねたくなったけど、

「じゃあ、行こう」

丸山くんが私の肩を押してエスカレーターに乗せる。

ちょっと強引な仕草に、やっとこの距離感に慣れてきた心臓が再び暴れだす。

すぐ後ろに丸山くんも乗ってきて、

やけに背中が熱く感じた。

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