無口な彼が残業する理由 新装版
「じゃあ……」
少し考えるように数秒間目を瞑り、
決めたと言わんばかりに視線が戻ってきた。
その瞬間、私は後頭部に温もりを感じて
迫り来る丸山くんの涼しげな顔に反射的に目を閉じた。
唇に感じた、柔らかい感触。
一瞬だけ感じて、すぐに離れた。
ゆっくり目を開くと、
穏やかに微笑む丸山くん。
「これでいい」
「え……?」
これでいいって、どういう意味?
私はきっと、とんでもなく間抜けな顔をしていると思う。
「青木には、内緒ね」
そう言ってもう一度口づける。