無口な彼が残業する理由 新装版

きっと深い意味はなかったんだな。

丸山くん、カッコイイもんね。

キスくらい、慣れっこなのかもしれない。

挨拶みたいなものなのかもしれない。

それにしても何かあれば青木青木って、

まさか丸山くん、青木のことが好きなの?

そんなことないって信じたいけれど、

この広い世界にはそういうタイプの人も何パーセントかいるっていうし。

「ねぇ、丸山くんって、青木の……」

違っていたら恥ずかしいから遠慮がちに切り出すと、

丸山くんはビクッとして私の頬に手を添え、唇に親指を立てる。

「言わないで。聞かないで」

そう言いたいのかもしれない。

苦しそうな顔の丸山くんは私の質問を最後までは聞かなかったけど、

私が何を聞きたいかわかった上で、

聞かれたくないから遮ったんだと思う。

そりゃあ男が好きだなんて、勘づかれたくなかったよね。

なのに彼は手を後頭部に滑らせて、

いつかのように強引に唇を重ねてきた。

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