無口な彼が残業する理由 新装版

ガチャッ――

扉のノブを捻る音がして、私たちは反射的に体を離した。

顔が熱いし心拍も落ち着かない。

身体の芯の痺れも治まらない。

扉からは寝ぼけたしかめっ面の青木が現れた。

「お前ら、ここにいたの?」

青木は私たち二人の顔を見比べて、

軽くため息を落とす。

「朝礼、始まるってよ」

青木に促されるまま、私たちは大人しく事務所へ向かう。

丸山くんの視線はまっすぐに青木に向けられていた。

感情までは読み取れない。

頭がパンクしそうな私は前を歩く二人を眺めてみる。

「お前、抜け駆けしてんじゃねぇよ」

「青木に言われたくない」

二人は何かを話していたけれど、

私にはよく聞こえなかった。



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