無口な彼が残業する理由 新装版
青木は更に渋い顔をする。
「はぁ?」
「どうしよう。ほんとどうしよう。好きになっちゃった」
ここ何年も沸き上がらなかった感情は
容赦なく私の胸を焦がしていく。
それなのに青木は手に持っていたA4サイズを丸めた紙で私の額をバシッとはたいた。
「しっかりしろ、神坂」
不機嫌極まりない青木の表情に急かされてハッと我に帰る。
「ごめん。仕事、しなきゃね」
私ははたかれた額に軽く触れて、
通常業務に取り掛かった。