無口な彼が残業する理由 新装版



学生の時は恋愛の優先度が断トツでナンバーワンだったけれど、

仕事を始めてみると恋愛なんて二の次三の次だ。

職務に支障を来すような恋愛は論外だし

恋患いとかいう言い訳で効率を下げることは許されない。

それなのに。

「神坂、ここ間違ってる」

「えっ? うそ。すみません」

失敗してしまった。

先輩に怒られた。

「神坂さん、さっきの画像は?」

「しまった! 消しちゃった!」

大事なデータを消去してしまった。

後輩にまで怒られた。

更に、

「クシュッ!」

としたら

ゴトッ!

とデスクのカップが倒れた。

もう、最悪だ。

朝の一件で、私は完全に我を失っていた。

自分のメンタルがこんなにも作業効率に連動しているなんて。

企画どうこうの前に、社会人としてまだまだ半人前なのだと思い知らされた。


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