無口な彼が残業する理由 新装版
パソコンだけは何とか死守して
こぼしてしまったコーヒーを片付ける。
「神坂、お前下手すりゃ死ぬんじゃね?」
私の不調を青木は笑う。
今まではただの戯れだと思って気にならなかったけれど、
今日はやけに腹が立つ。
これはきっと嫉妬だ。
丸山くんが青木のことばかり気にするから。
女の子ならまだしも、青木になんて。
馬鹿馬鹿しいけれど、可能性があるからやるせない。
だって、もし丸山くんがそっち側の人だとしたら、
私は女というだけで道が絶たれるのだ。
そして青木は間違いなく女が好きだから、丸山くんもまた、男というだけで道は絶たれていることになる。