無口な彼が残業する理由 新装版
「ふーん。じゃあ、神坂の不調は丸山のせいじゃないんだ」
手洗い場に腰を掛ける菊池さん。
腕を組んで、顔はニヤッとした笑顔だ。
「菊池さん、なんだか丸山くんのせいであってほしそうですね」
「あはは、そう聞こえる?」
「聞こえますよ。丸山くんのこと、何か知ってるんですか?」
尋ねると、ニヤリ顔が近付く。
「気になる?」
この顔、絶対に何か知っている。
何かっていうか、丸山くんの気持ちを知っている。
「気になりますよ。丸山くん、最近おかしいんです」
へぇ、と漏らしながら何か考えている菊池さんは、
「もっとおかしくなっちゃえばいいよ」
とんでもないことを言い出した。